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2013.4.22

Football から貰ったものを

本当に沢山のモノを僕はフットボールからもらっている。

音楽を生業として20年が過ぎた。
いい時ばっかりではなかったけれど、それでも沢山の出会いに恵まれ、今日がある。大変なことも多いけれど、充実。有り難いことです。
良いステージができた時は本当に嬉しい。その逆、数日間かけて作った曲がさっぱり気に入らずボツにした時は、もう悔しくて、眠れない。

曲作り。これが大変。その期間になると常に頭の中はそのことばかり考えている。言葉。フレーズ。韻。運転していても、街を歩いていても、そして女性と食事をしていても、頭の中はそのことばかり考えている。
朝起きてから夜眠るまで(時には寝ている間、つまり夢の中までも)、言葉に支配される僕の脳みそ。もう職業病と呼びたい。これを回避する方法はただ一つ。

フットボールで汗を流す。

アルバム制作で悩む度にピッチに出た。
今年の5月に発売するアルバムで11枚目(ソロ、グループ含む)。
製作期間の合間をぬって、ボールを蹴った。稚拙なボキャブラリー、お粗末な切り口、使い古された常套句。頭の中を駆け巡る日本語の羅列のうねり。迫る締め切りの恐怖と対峙しながら、それらを追いやる為にただひたすら丸いボールを追いかけた。するとね、よく眠れるんだ。

ボールを蹴った日。
その夜は間違いなく安眠。おのずと次の日の作業がはかどる。今でも僕が最終的には煮詰まらず、創作を続けることができるのは間違いなく上質な睡眠のお陰。だからそれはつまりフットボールのお陰。感謝。

さて、どうやって恩返しするのが良いのだろう(真剣に考えた)。
フットボールをテーマに曲をつくるのはどうだろう。選手が見せてくれるスーパープレイ。その技に魅了され、鳥肌が立ち、それをモチベーションとして作業に打ち込んだ。選手の気持ちを鼓舞することができる曲。その選手を後押しする為のサポーターの曲。そんな曲を書こう。

日本代表の試合を観戦しに行く。
その根底にはそんな気持ちがある。日本フットボールの躍進が、つまり自分の生活をより良くするのだから、これはもう応援するのにも熱が入る。きっと僕だけじゃなく、多くの人がそうだと思う。代表の活躍に胸躍らせ、日々の生活の糧にしている。だから楽しい。応援が楽しいと思える理由は、きっとそう言う所。選手を応援しているが実は自分に発破をかけている。選手を応援しながら自分を応援している。この循環がいい。

UKASUKA-Gの作詩。そんな気持ちを込めてペンを走らせている。フットボールからもらったものを、自分の体に取り込んで、そして還元。日本代表の活躍に少しでも貢献出来たら素敵だし、嬉しい。

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そしてヨルダンの旅。
代表の勇士を見る為に、2013年3月、中東の小国へと旅をした。ワールドカップ出場の瞬間を体験したいという気持ちも、もちろんあった。スタジアム全体が一つになるホームでの観戦も好きだけど、実はアウエィの試合もいい。不慣れな土地。初めてのスタジアム。相当な時間と、そこそこのお金を使って、そしてやっとたどり着く場所。そこに集まる気合いの入ったサポーターの雰囲気、これが凄くいい。テレビみたいに解説はない。全体が見渡せる良席は全くもって望めない。だけど本当に多くの気持ちをもった人々が集ってた。
ヨルダン人で満たされた超満員のスタジアムの一画に陣取った日本人サポーター。この中での勝利、最高だろう思った。

スタジアムでは代表応援団ウルトラスのメンバーの一人として声を出した。拡声器とドラムとサポーターの大合唱。戦いの音楽。声を出すのが僕の役目。自分で勝手にそう決めて、とにかく腹のそこから声を出し続けた。

ありがとうサッカー。ありがとう日本代表。いこうぜブラジル。

そんな気持ちで喉をからした。

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でも、負けちゃった。
結果は皆さんご存知の通り。2-1。残念だったなあ。ため息が溢れた日本ゴール裏。だけど選手はきっともっと悔しかったんだと思う。勝てたはずの試合を取りこぼし、長時間の移動を強いられ、さらなるプレッシャーにさらされる訳だから、穏やかじゃないはずだ。この敗戦からきっと沢山のモノを得て、そして次のステップへ行ってくれると信じている。大丈夫。絶対に大丈夫。

ヨルダンの街はお祭り騒ぎ。人で溢れ、道路は国旗を振りかざす車で埋め尽くされていた。渋谷でも勝利の夜は激しい感じになるけれど、ヨルダンの街はそれ以上。街を上げてのフィーバーだった。

「ありがとう日本! でも今夜は我々が勝った。アナタ達は強い。だけど我々も強くなった。共にブラジルへ行こう!」

不完全燃焼で終わった試合の落としどころを見つける為に、ヨルダンの街へ飲みに行った。隣で盛り上がるヨルダン人達にそう話しかけられた。
フットボールの素敵なところ。肌の色がちがったって、あっという間に友達になれる。共通の話題で繋がれる。

日本のサッカーの躍進について聞かれた。ヨーロッパで活躍する日本人選手の動向をヨルダンの人達はよく知っていた。スタジアムでは少し怖そうな印象だった人々も(レーザービーム、僕らもあてられたしね)、話すととにかく陽気。負けて悔しいはずなのに、でもとてもいい時間をそのバーで過した。

『ボールは丸くて、世界も丸い。乾杯』

そんな言葉で僕らは何度もビールジョッキをぶつけ合った。

ワールドカップがやってくる。2014年。どんな世界が待っているんだろう。
それを考えるとワクワクする。フットボールフィーバー。街に出ればサッカーの話で誰とでもすぐに繋がれる。ラジオだってテレビだって大好きなサッカーをもっともっと取り扱ってくれる。南アフリカ、ドイツ、日韓、そしてフランス。日本が出場した大会の年のこと、やっぱり克明に覚えているし。ブラジル大会。今回の予選はちょっとつまずいたけれど、必ず行くでしょう。
そして本大会へと僕らを誘ってくれるでしょう。ちょっとした紆余曲折があったほうが物語は楽しいに決まってるし、ドラマがあるほうが、ドキドキする。怪我して欠場した選手が困難なリハビリを終えて合流し、叩かれた選手が活躍して、青いシャツを着たサポーター達とブラジルで歓喜の雄叫びをあげる。そんな光景を今から想像している。その時得るであろう気持ちをまた曲にして、魂を込めて唄いたい。選手の為に、それを支えるチームやスタッフ、家族の為に、そしてやっぱり自分の為に唄いたい。

音楽とフットボールの融合。それをテーマに新しいことを始めました。
Music Interact Football for All。MIFA。UKASUKA-G の相方であり、長年同じチームで2トップを組む尊敬すべき音楽家(そして超がつく程のサッカー馬鹿)桜井和寿くんとMIFAを始めました。幸運にも出会えた音楽とフットボールという魅力溢れる二つのモノを掛け合わせて僕らなりの解釈で、新しい未来を見つけて行こう。そう思ってます。頭を柔らかく、情熱をもって、もらったものを取り込んで、そして恩返しをしてゆこうと思います。世界二大共通言語である音楽とフットボール。きっとそれで僕らはもっと人と繋がれるんだ。誰とだって繋がれるんだ。

ガクエムシー